協力雇用主とは
犯罪・非行の前歴のために定職に就くことが容易でない刑務所等出所者等を、その事情を理解した上で雇用し、立ち直りを助ける民間の事業主の方々です。
再犯防止を支える協力雇用主
犯罪や非行をした人たち(刑務所出所者等)は、再び地域に帰ってきます。
これらの人たちが再犯や再非行に至らないためには、仕事に就き、職場に定着して、責任ある社会生活を送ることが重要です。
一方で、保護観察終了者のうち無職者の再犯率は有職者の約3倍で、刑務所再入所者の約7割は再犯時に無職です。
刑務所出所者等への就労支援を効果的に実施し、再犯や再非行を防止するためには、協力雇用主の方々の存在が不可欠です。
協力雇用主の現状
全国に約1万5千社の協力雇用主がいらっしゃいますが、実際に刑務所等出所者等を雇用してくださっている事業主は、そのうち約600社で、雇用された人は約3千名に留まっています。
また、建設業、サービス業、製造業が全体の約8割を占めるとともに、従業員規模100人未満の事業主が全体の約8割を占めています。
刑務所等出所者等の円滑な社会復帰・職場定着のためには、事業主の方々との適切なマッチングが重要です。
そのため、幅広い業種の事業主の方々にご登録いただきたいと考えています。
協力雇用主を募集しています
犯罪や非行をした人の就労支援を一層推進していくためにも、その雇用に協力いただける協力雇用主を募集しています。
協力雇用主になるためには、保護観察所に登録していただく必要があります。
ご不明な点は、最寄り又は事業所の所在地を管轄する保護観察所(沖縄県内は那覇保護観察所)にお問い合わせください。
保護観察対象者等の雇用に協力いただくに当たり、ご理解いただきたいこと
- 更生保護の意義について
- 更生保護の意義・内容、協力雇用主の意義について
- 保護観察対象者等の再犯・再非行を防止し改善更生を図るためには、就業の機会を確保するとともに、就労を継続することが重要であること
- 保護観察対象者等の雇用に当たっては、その自立や社会復帰を目的とし、保護観察所と連携協力することが重要であること
- 個人情報の取扱いについて
- 保護観察対象者等及びその関係者の秘密を保持し、その名誉を尊重すること
- 個人情報を安全に管理するために必要かつ適切な措置を講じること
- 本人の同意を得ることなく、個人情報を第三者に提供しないこと
- 公共職業安定所を介した求人の協力について
- 保護観察対象者等の雇用に当たっては、公共職業安定所に対して刑務所出所者等就労支援事業専用求人の申し込みをすること
協力雇用主から暴力団を排除することについて
次のいずれかの事項に該当する事業主については、協力雇用主として保護観察所に登録することはできません。
- 法人等(個人、法人または団体をいう。)の役員等(個人である場合はその者、法人である場合は役員又は支店もしくは営業所の代表者、団体である場合は代表者、理事等、その他経営に実質的に関与している者をいう。)が、暴力団(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第2号に規定する暴力団をいう。)、暴力団員(同法第2条第6号に規定する暴力団員をいう。)または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者であるもの。
- 役員等が、自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもって、暴力団又は暴力団員を利用するなどしているもの。
- 役員等が、暴力団または暴力団員に対して、資金等を供給し、または便宜を供与するなど直接的あるいは積極的に暴力団の維持、運営に協力し、もしくは関与しているもの。
- 役員等が、暴力団または暴力団員であることを知りながらこれを不当に利用するなどしているもの。
- 役員等が、暴力団または暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有しているもの。
保護観察所での登録に当たっては、協力雇用主から暴力団を排除するため、役員等名簿、登記事項証明書等の提供をお願いしております。また、暴力団関係について該当がないことを確認するため都道府県警察本部に暴力団関係照会を行うことについて同意書をいただいています。皆様のご理解とご協力をお願いします。
国の支援制度
刑務所出所者等就労奨励金制度
実際に雇用してくださった協力雇用主に、最長1年間(実際には保護観察中または更生緊急保護の期間中)、奨励金を支給します。
就労・職場定着奨励金
刑務所出所者等を雇用した場合、最長6か月間、月額最大8万円をお支払いします。
※ 刑務所出所者等に対して、OJTや生活指導等を実施していただき、保護観察所にその状況の報告を行っていただきます。
最大 48万円
就労継続奨励金
刑務所出所者等を雇用してから6か月経過後、3か月ごとに2回、最大12万円をお支払いします。
※ 刑務所出所者等に対して、OJTや生活指導等を実施していただき、保護観察所にその状況の報告を行っていただきます。
最大 24万円
身元保証制度
身元保証人を確保できない刑務所出所者等を雇用した日から最長1年間、刑務所出所者等により被った損害のうち、一定の条件を満たすものについて、損害ごとの上限額の範囲内で見舞金をお支払いします。
最大 200万円
トライアル雇用制度
刑務所出所者等を試行的に雇用した場合、最長3か月間、月額4万円をお支払いします。
※ 事前にトライアル雇用求人をハローワークに登録していただくとともに、雇用保険に加入していることが条件となります。
最大 12万円
職場体験講習
刑務所出所者等に実際の職場環境や業務を体験させていただいた場合、講習委託費をお支払いします。
※ 社会保険に加入していることが条件となります。
最大 2万4,000円
事業所見学会
刑務所出所者等に実際の職場や社員寮等を見学させることにより、就労への意欲を引き出します。
地方公共団体における協力雇用主支援の取組
地方公共団体(都道府県及び市区町村)では、入札参加資格の審査に際して、または総合評価落札方式において、協力雇用主として登録している場合、あるいは、協力雇用主として保護観察対象者や更生緊急保護対象者を雇用した実績がある場合に、社会貢献活動や地域貢献活動として加点し、協力雇用主としての雇用実績等を評価する制度を採用しているところがあります。
沖縄県内では入札参加資格審査における優遇措置が、平成27年から沖縄県で、令和3年から宮古島市で、平成29年から石垣市で実施されています。
協力雇用主さんの声
沖縄県 古川様
私が「沖縄県暴力団離脱者社会復帰支援協議会会長」の21年間を含め、25年間取り組んできた「更生支援活動」で学んだことは、どんな形であれ、他人様に危害を与えてしまい、本人自らも、また大きく傷ついているという事です。その一例として、ある「保護観察対象者」からの手紙の一部をご紹介いたします。
保護観察対象者「K」君からの手紙(抜粋)
古川様 まずはじめに、私のような人間を社員の一員にして下さり本当にありがとうございました。言葉では言い表せないくらい感謝の気持ちで一杯です。…(省略)…私は今まで、本当にたくさんの人に迷惑をかけて、たくさんの人を不幸にしてきました。全て己が欲の為だけです。たくさんの物を盗んできました。なぜ、こういう人間を受け入れてくれたのだろうと考えます。…(省略)…。一部省略しましたが、その気持ちを忘れずに社会への第一歩として、進んでもらいたいと期待しております。また、当社グループは、いつでも「明るい笑顔のお帰りなさい」の気持ちで、これからも立ち直りに向けた取り組みを進めて参ります。
沖縄県 山下様
私たちは、高齢者、障がい者、児童を対象とした第2種社会福祉事業を展開している。これまでに数名の対象者を雇用してきた。立ち直ろうという意識が、勤務態度や職場での人間関係に表れている。
対象者の適性や能力を活用することで大きな戦力となっているし、利用者からも信頼されている。人生は長く、対象者にとって、再チャレンジは必要である。
企業の社会的責任と人材確保の視点から今後とも就労支援に取り組んでいきたいと考えている。
沖縄県 金城様
私たちは、一人ひとりと向き合い、じっくり話を聴く姿勢を大切にしています。
社会の一員として、居場所を確保する為には、安定した仕事に就くことが重要です。
当社では、協力雇用主として次の3つの約束をしています。①あいさつ ②整理整頓 ③早起き。それが仕事をすること、仕事をし続けることと信じています。
鹿児島県 水口様
少年たちを受け入れることは簡単。だけど迷っているのだったら止めたほうがいい。受け入れる側が生半可な気持ちでは預けられた方が傷つく。親の気持ちで、育てるという覚悟で接しないと。
佐賀県 岡本様
差別されることなく楽しく働けること、将来のことを話せる仲間がいること、こういったことが更生につながっていくのではないかと思います。
福岡県 野口様
協力雇用主は、彼らの立ち直りを信じ、職場を提供し、その立ち直りを最後まで信じ切ることです。
愛媛県 大岩様
どんな形であれ、人様に危害を与えてしまい、それ以上に本人自らが傷ついているに違いないと思う。「何が会っても常に君のことを心配している我々がいるんだぞ」といつも強く訴えかけ、心の中に温かいものが芽生えることが一番大切と思う。
大阪府 田中様
私が25年間取り組んできた更生活動で学んだことは、対象者に対し、諦めない心を持ち続けることが最も重要なことであり、それを実践することがやがて人を変えていくということです。
愛知県 野々山様
対象者と過ごした期間、そして現在、私は思うことがある。彼らにも然るべき「場所」があるはず。それを我々が共に探す。そして「場所」を見つけた時、しっかりとその場所で人生の持ち場を守るようになる。対象者もこの世に生を受けた以上、必ずどこかに生きる場所がある。その場所が見つかる日がくるまで、共に更生への道を歩むこと、それが我々の担いではないか。
静岡県 成島様
協力雇用主は不安が沢山あると思う。私の会社も保護観察対象者を雇ったが、辞めてしまう者もおり、残念に思うこともある。しかしやんちゃだった者が更生してくれた。そして今度は協力雇用主になり、若者を育てている。
神奈川県 関根様
就労支援とは、職場を提供するのみならず、定着させることにあると思います。そこには本人の就業意欲と彼らを受け入れる職場・同僚の支援と調和が必要です。これまで9名を雇用し「更生に寄り添う喜び」を感じています。
北海道 石橋様
様々な方を雇用して思うことは、働く気持ちがある人は仕事の遅い早いはあるにしても、何とかなります。協力雇用主として就労の機械は与えます。それに答えるのは、採用された方々です。雇用するからには立ち直ることを心から期待しています。